ドミナントセブンスコード、V7が重要なのは第16項:ドミナントモーションやその他の項で言ってきましたが、それだけにV7というコードには音楽理論では幅広い変化が許されています。代理コードも例外ではありません。本項ではダイアトニックコード以外のドミナントの代理コードを解説します。
代理コードが機能的な類似に依って成り立つことは第19項:代理コードで述べました。また、第16項:ドミナントモーションにてドミナントコードが不安定なコードである理由として増4度(トライトーン)を含むコードであるから、と説明しました。つまりその代理コードを考える場合、そのドミナントの核ともいえるトライトーンに着目する必要があります。
譜例1
ということでドミナントコードの代理コードの条件はそのドミナントコードと同じトライトーンを含むコードということになります。
ドミナントセブンスコードの代理コードとしてまず裏コード(置換ドミナント)を取り上げてみたいと思います。この裏コードは♭II7という形のコードです。V7と同じトライトーンを含む為代理コードとして使えます。譜例2はキーCメジャーのドミナントモーションですがV7であるG7に対して代理コードであるD♭7を使っています。ちなみにD♭7というコードのc♭音はbと異名同音なので厳密にはf〜c♭は増4度ではなく減5度ですが音程が一緒なのでトライトーンのサウンドとして使えます。
譜例2
このように裏コードを使ったドミナントモーションのことを裏進行と呼びます。
IIm7→ V7→ Imaj7というコード進行は比較的使われ易いコード進行です。
譜例3
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MIDIファイル
このコード進行のG7を裏コードにするとそれぞれのコードのルートがd→d♭→c、と半音ずつつ下降しなめらかなものになります。
譜例4
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MIDIファイル
例えばキーCメジャーの場合、ドミナントG7の裏コードはD♭7ということになりますが、このD♭7の構成音はd♭・f・a♭・c♭です。このようにキースケール以外の音が多く含まれます。d♭やa♭が含まれているのでこのコードに対するメロディーには注意する必要があります。それぞれの半音関係となるd・eやa・bは使い難いかもしれません。半音関係の音(特に短2度音程であるeやb)はケースバイケースですがコードサウンドを汚し易いのです。
ディミニッシュコードの方がドミナントの代理コードとしては使い易いかもしれません。中々特徴的なコードでトライトーンを2組持った4和音です。その為そのコードサウンドは非常に不安定なものでよく使われるコードです。
譜例5![Bdim7:【b】・[d]・【f】・[a♭]](images/020-5.jpeg)
第12項:様々な4和音>ディミニッシュセブンスコードでも触れましたが構成音だけ考えると3種類しかありません。つまり上記譜例5のBdim7は機能としてはDdim7・Fdim7・A♭(G♯)dim7と同じです。
Bdim7には肝心のトライトーンが含まれているのでV7の代理コードとして使えます。
譜例6
先程「ディミニッシュコードはトライトーンが2組ある。」と言いましたが、ではあと1組のトライトーンはどんなものか見ていきましょう。Bdim7コードを見るとdとa♭であることが分かります。「a♭」を「g♯」と解釈すると、記憶力の良い方はピンとくるはずです。このトライトーンはAmへのドミナントコードE7のトライトーンです。
譜例7
つまりBdim7はAmに対してのドミナントモーションが組めるのでE7の代理コードとして使用できます。しかしディミニッシュセブンスコードの柔軟性はそれだけではありません。G7はCだけでなくCmのドミナントでもあり、E7はAmだけでなくAのドミナントでもあるわけです。
譜例8
つまり1つのディミニッシュコードで4種類のコードにドミナントモーションが組めることになります。
図1
これは転調などをする際にも応用できるので利用価値の高い(利用頻度の多い)コードということです。
では簡単な使用例を示しておきます。以下の譜例9はキーCメジャーのI→V7→Iというコード進行です。
譜例9
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MIDIファイル
このG7のコードを代理コードのBdim7に変更してみます。
譜例10
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MIDIファイル
またディミニッシュセブンスコードはあるコードとあるコードの繋ぎ役になって経過和音的な使われ方もします。以下の譜例11ではF→G7のそれぞれのルートf・gの間ということでF♯dim7を使っています。これによりルートがf→f♯→gとなりまた違った流れを演出できます。
譜例11
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MIDIファイル
このようなディミニッシュセブンスコードの使い方をパッシングディミニッシュといいます。
譜例11の例でいえばF♯dim7はG7に対してのドミナントと解釈できます。とはいえこれは長2度(1音)音程の2つのコード間に置くことで常套句のように使えるので理論的に解釈しなくとも気楽に使えるものです。
キーの基本となるスケールのこと。キーCメジャーの場合Cメジャースケールを指し、Cマイナーの場合は(普通)Cナチュラルマイナースケールを指す。
楽曲の途中でキーが変わること、またその手法。普通調号を書き換えることで表しますが、比較的的短い間(一小節のみ等)の転調で調号を書き換える必要がないものを一時転調という。それに対し前者を本格的転調ということもある。
あるコードとあるコードの間に置いて「繋ぎ」の役目を果たすようなコード。前後のコードと同じ型のコードの場合も多い。