ある楽曲からその作者の手法を分析する要素は沢山あります。メロディーの作りやコードの使い方等です。その中でこのドミナントモーションという要素はよりその特徴が表出する部分でもあります。つまりそれだけ音楽理論の中で重要な位置を占めている、ということです。
ドミナントモーションとはあるコード進行のことです。次の譜例1をご覧下さい。
譜例1
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MIDIファイル
このようなドミナント(D)→トニック(T)、つまりV7→Iという強進行のことをドミナントモーションと呼び、強い終止感を生むものとなっています。G7からCに移行した際に「終わった」とか「安定した」という感じがすると思います。
ではこのような終止感が生まれる要因を考えてみましょう。キーCメジャーのドミナントコードであるG7を見てみましょう。
譜例2
このようにセブンスコードの構成音には増4度音程となる2音が含まれています。この増4度音程のことをトライトーンと呼びますが、その響きはとても不安定なものになります。つまりそもそもセブンスコードというのは不安定で次のコードへ移行しようとする性質を持っているのです。
次にドミナントのトライトーンがトニックコードへどのように結び付くのか見てみましょう。
譜例3
この様に流れているわけです。ということでこの2音の動きだけでもドミナントモーションの終止感は演出できることになります。
譜例4
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MIDIファイル
やはり終止感を感じることができると思います。
前述の通りドミナントモーションは音楽理論に於いてはとても重要なものなのでマイナーキーでもできなければなりません。ではキーAマイナーで考えてみましょう。ドミナントコードは第5音上にできるコードです。キーAマイナーのダイアトニックコードを見てみましょう。
譜例5
Em7ということになりますが、このコードには問題があります。Em7の3度音(g)と7度音(d)の音程が増4度にならず、トライトーンが含まれないのです。
譜例6
これではドミナントモーションができません。そこでこのEm7をE7に変えてみましょう。
譜例7
これで3度音(g♯)と7度音(d)の音程がトライトーンなりドミナントモーションが行えるようになりました。(これはあくまでドミナントモーションを行う為の変化であってEm7→Am7というコード進行が禁則であるというわけではありません)
お気付きの方もいるかもしれませんが、このようなE7はどこから来たと考えるのかというと普通はAハーモニックマイナースケールやAメロディックマイナースケールのダイアトニックコードに由来すると考えます。(各マイナースケールのダイアトニックコードについては第14項:マイナーキーでのダイアトニックコード>ハーモニックマイナースケールのダイアトニックコードや>メロディックマイナースケールのダイアトニックコードを参照)
ではEm7を使ったコード進行の場合とE7を使ったドミナントモーションの場合を聴き比べてみましょう。
譜例8
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MIDIファイル
譜例9
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MIDIファイル
どちらも強進行なので結び付きとしては安定していますが、E7の方が終止感が強いのが分かるでしょう。マイナーキーでのドミナントモーションはこのようにコードが変化して成り立つのです。
ルートが完全4度上行、または完全5度下降するコード進行のこと。